水島雄太のブログ

個人的かつ雑多なブログです。

2030半導体の地政学を読んだ

普段あまりノンフィクションは読まないのだが、昨今の半導体事情の盛り上がりに触発されて、タイトル買いをしてしまった。

結論としては、読み物としても大変おもしろく、勢いで読了してしまった。

地政学とは、政治的な現象とそれが生じた地理的条件との関係を研究する学問であるが、この本での地政学では、単に物理的な意味だけでなく、情報通信技術の発達によって、 地政学に情報通信の要素が加わったことで、サプライチェーンを含めて地政学を論じている。

情報通信技術の発達によって、あらゆるモノがコンピュータにつながるようになった。

そのためあらゆる、軍事的・情報的・経済的な領域において半導体が重要になり、各国が軍事的・情報的・経済的な優位性を確保するため、過去とは比較にならないほど熾烈な競争を繰り広げている。

現在半導体ファウンダリーにおいてトップを走るTSMCは他の企業の追随を許さない技術を有しており、先端的な半導体の生産はTSMCでないと実現できないと言われている。

このTSMCは米国や中国など、主要各国で設計されたチップを生産しており、米国・中国の軍事・経済のアキレス腱となっており、このTSMCが、現在の米中関係を関係付ける大きなコマとなっている。

その他にも、アルメニアアゼルバイジャン紛争や、米国の対中政策、過去の日本の日米貿易摩擦についても論じており、なかなか興味深い内容となっている。

半導体地政学とあるが、これは半導体と制限せずに地政学と呼ぶことができる本であると思うので地政学の入門書としても面白いのではないかと思う。