はじめに
以前から、神奈川県では一部の地域を除いて(金沢八景以北と城ヶ島の一部の地域)ではほぼタコ釣りが出来ないという認識であったのですが、自分の身の回りで、「船宿だったら問題ない」「漁船登録されている手漕ぎボートなら問題ない」など情報が錯綜していたため、法律的な根拠でもって実際に神奈川県でタコ釣りが出来るのか、ということを調査してみました。
できるだけ一次情報のみを参照したいため、国または地方自治体などの資料・ウェブサイトのみを参照しております。
結論としては、「神奈川県では一部の地域(金沢八景以北、城ヶ島の一部の地域など)を除いてタコ釣りが出来ない」 ということになったのですが、当方は法律の専門家でもありませんので間違った法解釈をしているかもしれませんし、自分が考慮に入れていない法令や条例などがあり間違った結論になっているかもしれないので、その場合は教えていただければと思います。
なお、「この人は大丈夫だと言っていた」や「この船宿ではこの地域でタコ船を出していた」などについては、いただいとしてもこちらも訂正しにくいので、間違いをご指摘の場合は法解釈の論拠や、国または地方自治体に紐づく資料などを提示いただければと思います。
漁業権について
まず漁業権の定義について調べます。
漁業権については、
でわかりやすく説明されています。
まず
漁業権制度とは、都道府県知事の免許を受けて、一定の水面において排他的に特定の漁業を営む権利を取得する制度
とあります。
免許を発行する主体は国ではなく地方自治体ということですね。
水産庁/漁業権について:水産庁 の 漁場マップ のリンク先が各自治体になっているのはおそらく免許を発行する主体が自治体だからなのでしょう。
引き続き、水産庁のウェブサイトを参照します。
漁業権は、漁「場」ではなく、漁「業」を排他的に営む権利であり、免許を受けた漁業を営むことを妨げるもの(漁業権侵害)に対する排除・予防が可能だが、漁業権侵害でない限り、同じ漁場内で他の活動を行うことは可能)
漁業権は、物権的請求権の付与により、その法律上の権利の保護を強化することを目的として、民法上の物権に生ずるものと同様の法律効果を発生させることとしたものです
とあります。
つまり漁業権は民法上の物権に準じた権利、ということです。
民法上の物権の主体は、「自然人」または「法人」であることから、人や法人が行使出来るということですね。
漁業権については以下の3つがあるようです。
- 共同漁業権
- 区間漁業権
- 定置漁業権
区間漁業権は養殖業、定置漁業権は定置網などに関する権利なので、釣り人が関係するのは 1.共同漁業権 ということになりそうです。
入漁権について
漁業法 第三款に入漁権というものがでてきます。
第三款 入漁権 (入漁権取得の適格性) 第九十七条漁業協同組合及び漁業協同組合連合会以外の者は、入漁権を取得することができない。 (入漁権の性質) 1 第九十八条入漁権は、物権とみなす。 2 入漁権は、譲渡又は法人の合併若しくは分割による取得の目的となるほか、権利の目的となることができない。 3 入漁権は、漁業権者の同意を得なければ、譲渡することができない。
漁業権は上述のように地方自治体から免許を受けて権利を得るのに対し、入漁権は漁業権の同意を得て譲渡などが出来るという違いがあるということと読めます。 また、入漁権は 漁業協同組合及び漁業協同組合連合会以外の者は取得することが出来ないと明記されています。
漁業権の行使について
漁業権の行使については 漁業法 第四款 漁業権行使規則等 で記載があります。
関係しそうなところを引用します。
(組合員行使権) 第百五条団体漁業権若しくは入漁権を有する漁業協同組合の組合員又は団体漁業権若しくは入漁権を有する漁業協同組合連合会の会員たる漁業協同組合の組合員(いずれも漁業者又は漁業従事者であるものに限る。)であつて、当該団体漁業権又は入漁権に係る漁業権行使規則又は入漁権行使規則で規定する資格に該当するものは、当該漁業権行使規則又は入漁権行使規則に基づいて当該団体漁業権又は入漁権の範囲内にお いて漁業を営む権利(以下「組合員行使権」という。)を有する。
漁業権もしくは入漁権が無いと漁業が出来ないと読めます。
遊漁券
前述のように漁業権もしくは入漁権がないと釣りが出来ない気がしますが、一方で漁業権が設定されている地域での渓流釣りでは、遊漁券を購入すれば釣りが出来るのはご存知かと思います。
これについては、漁業法 第百七十条 に明記されていました。
(遊漁規則) 第百七十条内水面における第五種共同漁業の免許を受けた者は、当該漁場の区域においてその組合員(漁業協同組合連合会にあつては、その会員たる漁業協同組合の組合員)以外の者のする水産動植物の採捕(次項及び第五項において「遊漁」という。)について制限をしようとするときは、遊漁規則を定め、都道府県知事の認可を受けなければならない。 2前項の遊漁規則(以下この条において単に「遊漁規則」という。)には、次に掲げる事項を規定するものとする。 一遊漁についての制限の範囲 二遊漁料の額及びその納付の方法 三遊漁承認証に関する事項 四遊漁に際し守るべき事項 五その他農林水産省令で定める事項 3遊漁規則を変更しようとするときは、都道府県知事の認可を受けなければならない。 4第一項又は前項の認可の申請があつたときは、都道府県知事は、内水面漁場管理委員会の意見を聴かなければならない。 5都道府県知事は、遊漁規則の内容が次の各号のいずれにも該当するときは、認可をしなければならない。 一遊漁を不当に制限するものでないこと。 二遊漁料の額が当該漁業権に係る水産動植物の増殖及び漁場の管理に要する費用の額に比して妥当なものであること。 6都道府県知事は、遊漁規則が前項各号のいずれかに該当しなくなつたと認めるときは、内水面漁場管理委員会の意見を聴いて、その変更を命ずることができる。 7都道府県知事は、第一項又は第三項の認可をしたときは、漁業権者の名称その他の農林水産省令で定める事項を公示しなければならない。 8遊漁規則は、都道府県知事の認可を受けなければ、その効力を生じない。その変更についても、同様とする。
組合員以外の者が遊漁する場合の取り決めが内水面限定で明記されています。
渓流釣りなどで購入する遊漁券は漁業法 第百七十条に基づいて発行されていると推察できます。
漁業法では、組合員以外の遊漁に関する規定は この漁業法 第百七十条 以外には存在しません。
「船宿だったら問題ない」「漁船登録されている手漕ぎボートなら問題ない」かどうか
上記より、漁業権が設定されている海域では組合員以外は漁業をすることが出来ず、組合員以外の遊漁に関する規定も内水面に限定されることから、 オカッパリ・船宿・手漕ぎボートなどいかなる釣りにおいても漁業権が設定されている地域では釣りが出来ないという結論になります。
ただし、漁業法第八十六条に以下のような条文があります。
(漁業権の条件) 第八十六条都道府県知事は、漁業調整その他公益上必要があると認めるときは、漁業権に条件を付けることができる。 2前項の条件を付けようとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見を聴かなければならない。 3農林水産大臣は、都道府県の区域を超えた広域的な見地から、漁業調整のため特に必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、第一項の規定により漁業権に条件を付けるべきことを指示することができ る。 4免許後に第一項の条件を付けようとする場合における第二項の海区漁業調整委員会の意見については、第八十九条第四項から第七項までの規定を準用する。この場合において、同条第四項中「前項の場合において、漁業権を取り消すべき旨」とあるのは、「第八十六条第一項の規定により漁業権に条件を付けるべき旨」と読み替えるものとする。
農林水産大臣・都道府県知事・海区漁業調整委員会で合意出来れば、その地域の共同漁業権に条件をつけることが出来るということです。 この法律に基づいて制定されているのが下記の明石市の独自のタコ釣りルールかと推察されます。
神奈川県で明石市のような条件がつけられていないか調べてみましたが、存在を確認できませんでした。
